ラグビーW杯 2015 イングランド大会、日本チームが世界中から賞賛を浴びている。
世界ランク3位(当時)の南アフリカは、これまでのW杯で優勝2回、勝率は.862とまぎれもなく世界最高峰のチーム。このチームを相手に、これまでのW杯でたった1勝、世界ランク13位(当時)の日本が勝利したことは、まさに「史上最大の衝撃」「世紀のジャイアントキリング」であり、世界中から賞賛を浴びる出来事であった。
試合に勝利したこと。W杯で24年ぶりの白星をあげたこと。世界トップのチームを撃破したこと。
当然ながら、スポーツの試合である以上、最後に勝利をもぎ取った、この結果は重要であり、賞賛に値することは間違いない。しかし、勝利という結果よりも日本チームの勇猛果敢なプレーと勝利に対する直向きな姿勢に大きく心を動かされ、選手全員が勝利のために戦った(戦えた)ことに最大の賛辞を贈りたいと強く感じた。
体格に劣る日本チームは、これまでのW杯で常に終盤に世界と力の差を見せつけられ、苦杯を嘗めさせられてきた。しかし、今回の南アフリカ戦、75分からの怒涛の連続攻撃。日本チームの勝利に対する執念が感じられた。
“One For All, All For One” 「1人はみんなのために、みんなは1人のために」
ラガーマンなら誰でも知っているラグビー精神を表す言葉。
しかし、以前、本ブログでも紹介(こちら)したように、最後の”One”は” Victory”を表している。すなわち、「みんなは勝利のために」。
南アフリカ戦79分、13人の怒涛のモール。まさに、“All For Victory”を体現するプレー。
ラグビーは自国籍を持たなくても代表でプレーできるという特徴があり、現日本チームも31名中10名が外国出身選手である。しかし、あのモールは、国籍や出身地など全く関係なく、まさにみんなは勝利のためだけに戦っていることを如実に表したプレーだったと思う。
惜しくもモールではトライを取れなかったが、さらにその後の連続攻撃。ペナルティゴールで同点を狙える場面でもショットを選択せずスクラム。勝利ための選択だったと同時に、これまでの世界で最も過酷な練習に裏打ちされた選択でもあったと感じる。先に「戦った(戦えた)」と記した理由はそこにある。勝利を信じて、勝利のためにプレーすることは、ただ単に試合中に「勝ちたい」と強く思うことだけではない。試合に勝つために、それまでの間に選手達が何をしてきたか、どれだけ思いを共有してきたかにあるのだろうと思う。世界で勝利するために耐えてきた過酷な練習と選手全員の強い思いがあったからこそ、スクラムを選択”できた”のであり、84分の逆転トライを産み出したのであろう。勝利という結果以上に、それにたどり着くまでのプロセスに最大の賛辞を贈りたいと思う。そして、我がナショナルチームを誇りに思う。
Fortune favours the brave. 『幸運の女神は勇者に味方する』
英語のことわざで、サッカーの元イングランド代表FWのMichael Owen氏がラグビー日本代表の戦いを評した言葉。
ペナルティゴールを選択して引き分けだったとしても、逆転のトライが取れずに敗れていたとしても、日本チームの戦いは賞賛に値したことだろう。しかし、勇気ある戦いをした日本チームには勝利という結果がもたらされた。今夜のスコットランド戦、そして今後の日本チームのW杯での活躍を期待するとともに、南アフリカ戦を見て、ラグビーを始める子ども達が増え、現スクール生達もラグビーの良さを見つめ直し、当スクールの卒業生がいつかナショナルチームで活躍する日がくることを期待する。そして、勝利を目指すことはもちろん大事だが、1つのトライをみんなで取りに行く精神を学んで、大きく成長してもらいたいと切に願う。